アラスカンマラミュートの莱夢のものがたり「第23話 ドッグショーデビュー」です。

アラスカンマラミュート Prime Snow 〜莱夢といた日々〜

 第23話 ドッグショーデビュー 


 2001年3月31日。この日、東京ビッグサイトで開催された「2001年アジアインターナショナルドッグショー」で、私と莱夢は記念すべき(?)ドッグショーデビューを果たした。

 前日から莱夢をばっちりシャンプーし、気合を入れた私だった。当日はブリーダーさんやほかの出陳者と、午前4時半に有明駅周辺で待ち合わせた。5時の開門のあと、車を止めてパドックまで荷物を運ぶ。莱夢は出陳犬なので、バリケンに入れて会場に搬入した。私と莱夢の荷物は、ハンドリング用の着替えと莱夢のトリミング用品(と、言っても当時はコームだけ)、莱夢のおやつ程度しかない。身軽と言えば身軽だった。当日のブリーダーさんの出陳犬は10頭を超えていたと思う。それでもあてがわれたパドックはとても狭く、バリケンは2段重ねだった。莱夢はいつもと違う雰囲気に、バリケンの中で不安そうな鳴き声をあげた。ショーの出番が早い男の子から、さっそくトリミングが始まった。丁寧にブラッシングされ、ひげを切ったり爪を切ったり、あちこちにパウダーをはたいたり・・・。白い部分はより白く、黒い部分はより黒くお化粧をほどこしていく。犬のお化粧・・・。これには私も驚いた!(ちなみに莱夢は一度もお化粧をしたことがなく、いつもスッピンで勝負なのです。)ほんと、犬も化けるんだなぁと感心しきり!

 ショーが始まる前、リング内で軽く練習をしてみた。はじめてのショーに緊張気味の私。とりあえずいつものように軽くラウンドしてみる。莱夢はいつもどおりに走ってくれた。マイペースの莱夢に助けられ、「わぁ〜!私も莱夢もなんだかすごくかっこいいかも!」とミーハーな気分になってしまい、緊張も解けてしまう私だった。

 いよいよショーの開始時間が迫ってきたので、私はハンドリング用の衣装に着替えることにした。莱夢は白と黒が多い色合いなので、私の衣装まで黒いと莱夢が沈んで目立たなくなってしまう。だから、莱夢が浮き上がって見えるよう、なるべく淡い色を選んだ。また、走ったり立てひざを着いても大丈夫なように、長めのフレアースカートにした。足元は滑らないよう、履きなれたスニーカーにした。

 審査に向けてどの子もトリミングしてもらったのだけど、莱夢までは順番が回ってこなかった。莱夢はブリーダーさんの出陳犬の中でも一番若かったので仕方がないかも・・・。ちょっと残念だった。「ひげだけでも切る?」と、聞かれたが、私は素の莱夢で充分だと思い「このままでいいです」と答えた。莱夢に無駄な箇所なんてないよね?このポリシーを最後まで貫きたかった私だが、後のショーチャレンジにおいて、方向転換することになる。ある決意と覚悟を決めて、莱夢のひげが切られることになるのは、まだずっと先のお話・・・。閑話休題。莱夢はトリミングらしいトリミングもされず、軽くブラッシングしただけで審査に臨むこととなった。

 リングサイドでゼッケンの確認をしてもらい、いよいよ入場のときを待つ。莱夢の年齢クラスは「ヤングアダルト」で、同じクラスの女の子は3頭いた。莱夢はその中でも一番若かったので、莱夢を先頭に入場してラウンドすることになる。自分でも信じられないくらい落ち着いていた。勝つとか負けるとか関係なく、こんなに大きな大会に莱夢と一緒に参加できることが嬉しかった。

 午前9時、いよいよ審査員の指示があり、スチュワードに促されてリング内に走りこんだ。そのままラウンドする。莱夢はいつものように、ときどき私を見上げながらちゃんと走ってくれた。一周したところで審査員の指示で止まると、いよいよ個別の審査。と、思ったら、ほかの子はみんなスタックしている。「莱夢もスタックしなくちゃ」とあせったところで、先頭だった莱夢から個別の審査がはじまった。まずは触審。歯を見て、背中から腰、尾、股のあたりまで触り、審査員は右の人差し指で数字の「1」を描くようなしぐさをした。「アップ・アンド・ダウンかな?」と、思いリングを斜め左方向に走り、ターンして審査員の前へ。本来ならばここはフリーステイで手を加えてはいけないのだが、私はそれを理解していなかったので、思い切り莱夢をスタックしようとしてしまった。審査員の右の人差し指が円を描くように動き、ラウンドの指示を出した。私と莱夢はリードを巻き取るのに手間取りながら、リング内をゆっくり走った。最後尾に付き、前にいる2頭の審査を待つ。やがて2頭の審査が終わり、莱夢が押し出されてまた先頭にきたところで、審査員の「全員でラウンド」の指示。莱夢を先頭にゆっくりとラウンド。審査員の前に戻ったところで、審査員は莱夢を指差し、スチュワードが青と紫のリボンをくれた。「なんだこれ?」と、よくわからないまま退場しようとした私だった。あ〜、終わった!!莱夢はとってもご機嫌で尻尾を振ってるんるんしている。莱夢が楽しくてよかったなぁ・・・。と、そこにブリーダーさんの「もう1回よ!もう1回!!」の声が・・・。「もう1回って???」と、まったく事態がわからない私。スチュワードが「こちらへ」と、リングの端に誘導してくれた。

アラスカンマラミュート 画像 莱夢はなんと、ヤングアダルトクラスの1席に選ばれたのだった。青と紫のリボンはその証だった。莱夢より年上のアダルトクラスで1席に選ばれた子と、ウィーナーズビッチ獲得を目指して再度リングで競うことになる。私はまだドッグショーの審査システムがよく理解できてなかったので、「ふ〜ん、そうなんだ」くらいにしか思わなかった。アダルトクラスの審査が終わり、アダルクトラス1席の子が選ばれた。審査員の指示で、若い莱夢を先頭に、1席どうしの2頭がラウンドする。審査員は莱夢の後ろのアダルトクラス1席の子を指差した。私はまた触審があるのかと、莱夢をスタックさせようとしていてそれに気が付かなかった。「もう終わりだよ」のブリーダーさんの声に「え?」っと驚き、ウィナーズビッチに選ばれたアダルトクラスの子が写真撮影されてる脇を、そそくさと早足で退場したのだった。はずかしぃ〜・・・。

 ブリーダーさんは「莱夢がんばったね」とすごく褒めてくださり、莱夢もずっと尻尾をあげて得意そうだった。もしかして、莱夢はショーに向いてるかも・・・。私は緊張して何が何だかわからなかったけど、意外な結果に驚きつつ、すっかりよい気分になっていた。何よりも莱夢に励まされてリングを走った感じだった。いっけん細く頼りなさそうなショーリードを通して、「お母さん大丈夫!私がちゃんと走るから安心してね!」と、いう莱夢の声が聞こえるような気がした。不思議な一体感だった。拍手の中を莱夢と一緒に走る緊張感と快感。「どう、うちの子キレイでしょ?」という、親ばかモード全開&優越感。すっかりその気になった私は、「この先もドッグショーに出てみよう」と、軽い気持ちで思っていた。そして、この日から莱夢のショーチャレンジは事実上はじまった。勝ち負け関係なしに、ただただ「楽しい」気持ちだけで・・・。