アラスカンマラミュートの莱夢のものがたり「第15話 わたし、脱いだら凄いんです」です。

アラスカンマラミュート Prime Snow 〜莱夢といた日々〜

 第15話 わたし、脱いだら凄いんです 

 半袖の季節が来た。通勤電車でつり革を掴む私の腕は、ちょっとした注目の的。だって、年甲斐もなく痣だらけ、傷だらけなんだもん。ほとんどが、莱夢と遊んでいてできた傷だ。誤解のないように最初に書いておくが、莱夢が故意に付けた傷はひとつもない。帰宅した私を熱烈歓迎してくれたときにできた、狼爪によるひっかき傷や痣ばかりだ。莱夢に悪気はなくても、体重30kgの莱夢が飛びつく*1と、その爪が当たった場所が青痣になる。下手に避けてしまい、支えを失った莱夢の前足が当たり、太ももから膝まで鞭で打たれた(?)ような紫色の痣をつくったこともあった。そのほかにも、散歩中に転んでできた傷やどこかにぶつけた痣もあり、まさに脱いだら凄い身体をしてる。

 最初にして最後(にしてほしい)の流血事件を紹介しよう。自転車での散歩を練習中、自転車ごと引き倒され、そのまま引きずられたのだ。そのときは本当に痛かった。今まで調子よく自転車と併走していた莱夢が、突然前方の暗闇に向かってダッシュした。たぶん、猫が横切ったんだと思う。引っ張る莱夢に「待て!」のコマンドをかける間もなく、私は自転車ごとコンクリートの地面に叩きつけられた。襷がけに掛けたリードが、私の首に引っかかりながらも抜けかかった。死んでもリードは離すもんか!!しびれる左手でしっかりリードを掴みなおした。莱夢はチョークカラーを付けているので、相当首に負担がかかっていたと思う。が!!さすが世界最強の橇犬!チェーンで首を締め付けられながらも、自転車ごと私を引きずって歩いた。私がようやっと「莱夢!待て!!」と叫ぶと、立ち止まってくるりと振り向いた。私は「しまった!」と怖れ慄く莱夢を期待していたが、莱夢は満面の笑顔を浮かべていた。「お母さん、なんかいたよ!」とでも言いたげな顔。まったくもう、ママをこんな目にあわせておいて、全然反省してないらしい。私はそこでがっちりと莱夢を叱るべきだったのだが、痛くて起き上がれずにいたためタイミングを逃してしまった。ようやっと私が立ち上がったときには、莱夢もすっかり落ち着いていた。今さら叱っても効果ないだろう。こんなに痛い目にあっておきながら、それを訓練に活かせなかった自分が情けない。

 その日は怪我した左腕と両膝をかばうように、ゆっくり自転車を押しながらとぼとぼと帰った。時々痛くて立ち止まる私を、莱夢が「なになに??」と見上げる。そんな無垢な瞳が、怪我をしようが痛かろうがたまらなくいとおしい。どんなに痛い目にあっても、不思議と苦にならない。ひとつひとつの傷や痣が、憧れのマラミュートと暮らしてる証に思えてくる。そんな私って、やっぱりちょっと変??

*1:飛びつき
喜びを表現する仕草だが、大型犬の場合はやめるように訓練したほうがよい。
莱夢の場合、私やだんな様、実家の両親にはOKとしている。その他の人(特に子どもや見知らぬ人)の前では、「座れ」をするように訓練している。