アラスカンマラミュートの莱夢のものがたり「第6話 お迎え、そして始まる莱夢騒動」です。

アラスカンマラミュート Prime Snow 〜莱夢といた日々〜

 第6話 お迎え、そして始まる莱夢騒動 

 いよいよ莱夢を迎える日がやってきた。12月23日、よく晴れた寒い日だった。この日は、ブリーダーさん宅でT夫妻&五月ちゃんと待ち合わせをしていた。10月にブリーダーさん宅からT夫妻のもとへ移動した五月ちゃんは、とても大きくなっていた。五月ちゃんの移動に立会い、T夫妻のご苦労をメールで知っていた私は、2ヶ月ぶりに会った五月ちゃんの成長ぶりがとても嬉しかった。おしゃべりもそこそこに、ブリーダーさん宅にあがりこみ、食事の与え方や接し方など、基本的なレクチャーを受けた。そして、莱夢の予防接種の予定が書かれた手帳をいただいた。いよいよ、莱夢の移動だ。

アラスカンマラミュート 画像 移動はあっけなく終わった。母犬キャロットの不安そうな表情を尻目に、ブリーダーさんが莱夢を抱き上げ渡してくれた。そのまま莱夢を車の後部座席に乗せ、横にだんな様が座った。莱夢ははじめての車だというのに、尻尾を振ってはしゃいでいた。そして、だんな様の顔や窓ガラスをなめて陽気に振る舞った。私は運転席に乗り込み、イグニッションキーを回した。窓を開け、ブリーダーさんとT夫妻、五月ちゃんに挨拶した。ブリーダーさんは、「どうぞよろしくお願いします」と丁寧に言った。大丈夫。あなたの大切な娘は、私が責任を持ってしっかりと育てるから。莱夢は後部座席で嬉しそうに尻尾を振っていた。なんて明るい子なんだろう。ふつうは固まって動かないか、母犬やブリーダーさんに助けを求めて鳴くと言うのに・・・・。走り出した車の中でも、相変わらず莱夢は陽気だった。疲れると、だんな様の膝にあごを乗せて眠ってしまった。私は、莱夢を迎える喜びで、車に充満する莱夢の匂いすら嬉しかった。

アラスカンマラミュート 画像 自宅に着くと、まずは伽凛を2階の寝室に閉じ込め、莱夢をリビングに移動した。莱夢はホットカーペットカバーに爪をたてながら、ほふく前進で歩きまわった。そして、テーブルの下を何度もくぐって遊んだ。寝室から伽凛と出し、莱夢と対面させた。莱夢は興味津々で伽凛に魅入っていた。莱夢が落ち着くのを待って食事の用意をしたが、莱夢はいっさい食べなかった。そろそろトイレは大丈夫か?と、警戒したとたん、思い出したように莱夢は突然しゃがみこんでオシッコをした。お気に入りのホットカーペットカバーには、小さな黄色い水溜りができてしまった。あわてて雑巾とペットシートを持って行ったが間に合わず、立派なウンチまでされてしまった。ああ、なんてこと!ホットカーペットカバーを撤去し、水洗いしてベランダに干す。その間に莱夢は、ホットカーペット本体にもオシッコをしてしまった。トホホと思いながらも、泣く泣くホットカーペットの汚れを拭き取った。

 当日はまだまだ重労働が待っていた。それは、莱夢のシャンプーだった。ブリーダーさんは、「最初のコミュニケーションよ!」と、笑って言っていたが、そんな簡単なものじゃなかった。莱夢をシャワーで濡らすと、きっと怖かったんだろう、ぴったりと私にくっ付いて離れなかった。そんな莱夢をシャンプーし、すすぎ、タオルで拭く。ここまでは簡単だった。が!ドライヤーはメチャクチャ大変だった。タオルドライしただけのびしょ濡れの莱夢は、リビング中を逃げ回った。無理やり捕まえてドライヤーをかけると、私の手を振り解いて逃げてしまう。捕まえては逃げ、捕まえては逃げ、捕まえては逃げ・・・・、エンドレス!なんとか莱夢が乾いたころには、私もだんな様もへとへとだった。

 夜もふけたので、とにかく莱夢を寝かすことにした。「ハウス!」と声をかけながら莱夢をケージに入れる。「おやすみね」と挨拶して、部屋の明かりを消した。そのとたん、莱夢は夜の闇を引き裂くような、悲しい鳴き声をあげた。ヒーンヒーン、キューキュー、キャンキャン、ギャインギャイン!!まるで、虐待されているような悲鳴だった。2階の寝室のベッドで、私もだんな様も耳を覆った。だんな様は不機嫌を通り越して怒っていた。私は、「仕方ないよ、今日は初日だもん。みんな、そうやって慣れていくんだから」と、だんな様に言った。その言葉は、自分自身に言い聞かせる言葉でもあった。私はベッドの中で手を合わせ、思わず祈ってしまった。ああ、どうか莱夢が静かになりますように。どうか、どうか鳴きやみますように。神様!!2時間ほど経つと、莱夢はさすがに静かになった。

 何か、夢を見ていたと思う。どこかで悲鳴が聞こえていた。きっと夢を見てるんだ。いいや、夢じゃない。なんだ、この声は?!はっと目を覚ますと、階下から恐ろしい悲鳴が聞こえてきた。ギャンギャン!ウォーンウォーン!!莱夢だ、莱夢が鳴いてるんだ。隣のベッドではだんな様が頭を抱えていた。「なんとかしてくれよ!」そんなこと言ったって・・・。私は急いで階下に降りていった。リビングのドアを開けると、むせ返るような強烈な悪臭がした。明かりを点けて、愕然とした。ケージの中に、ウンチとオシッコにまみれた莱夢がいた。唖然とする私を見て、莱夢は嬉しそうに尻尾を振った。ウンチまみれのケージを掃除するために、莱夢をケージから出す。莱夢はウンチで汚れた足のまま部屋中走りまわる。泣く泣くウンチに汚れた床を掃除した。そして、ケージのスノコをお風呂場で洗った。寒い!それに臭い!!もぉ最低!!!

 ひととおりの処理を終えて、私は不安と疲労で泣き出してしまった。不安と焦りの毎日がはじまったのだ。幼い莱夢を抱えて、これからどうなるんだろう。安易に飼うんじゃなかった。悲しいけど、後悔してしまった。そんな夜が何日も続いた。仕方なく、トイレが我慢できるようになるまでは、莱夢をフリーで寝かすことにした。そして、私はソファで眠ることになった。だんな様は莱夢を嫌って滅多にリビングに来なくなり、まるで家庭内別居状態だった。伽凛もストレスから吐いたりした。毎日がたいへんなだけで、莱夢を「可愛い」とは思えなかった。むしろ、静かで平和な家庭を乱す「邪魔者」のような気がした。あんなに憧れたマラミュートとの暮らしが、いざはじまってみると試練の連続だった。

 どうしようもない不安な気持ちを、五月ちゃんのママのToshiさんに相談した。Toshiさんは私の愚痴や悩みを受け止め、勇気とアドバイスをいっぱいくれた。まさに「救いの女神」だった。当時を、こうして笑い話にできるのは、Toshiさんのおかげだと思う。彼女の存在なくして、今の楽しい毎日は有り得なかっただろう。