アラスカンマラミュートの莱夢のものがたり「第1話 作戦開始!あえなく玉砕」です。

アラスカンマラミュート Prime Snow 〜莱夢といた日々〜

 第1話 作戦開始!あえなく玉砕 

 だんな様になる人には内緒だったけど、私には密かな夢があった。それは、憧れの「アラスカンマラミュート」と暮らすこと。結婚が決まり、一戸建てを建てることになったとき、「マラミュートと暮らす」という密かな企てを、いよいよ実行に移すときがきたと思った。

 だんな様になる人にマラミュートの良さをわかってもらうには、まず私自身がマラミュートを知っていなくてはならない。でないと説得力がないし、ウソになってしまう。自分自身の目でマラミュートを見てみたいと思い、タウンページに載っていた繁殖元に行くことにした。

 係の人に案内されてマラミュートの犬舎に行った。デ、デカイ!!まるでライオンのようだと思った。彼は犬舎の格子にのしかかり、大きな尻尾をふりつつ愛想をふりまく。ゴールドの瞳。大きな前足。そして尖った犬歯。私は怖気づいてしまい、触れることができなかった。係の人は、「大きくなるし力も強いから、はじめて犬を飼うのなら違う犬種にしたほうが無難ですよ。」と言って、ゴールデンレトリバーを薦めてくれた。違うの!私はマラミュートがいいの!!ああ、でもこんなに大きくなるなんて・・・。でも、やっぱりマラミュートがいいの。私の中で、迷いが生まれた。

 なぜマラミュートがいいのだろうか?私に飼いきれるだろうか?迷いながらも、未来のだんな様の攻略を進めていった。本屋で犬種の本を買った。本によっては、「初心者向きでない」とか、「寒い地方で飼うべき」などと、私にとって都合が悪いことも書いてあった。事実は事実だけど、まずは、だんな様になる人にマラミュートの良さをわかってもらうべく、なるべくマラミュートの評価が高く、「どのワンコもそれなりに飼いやすいですよ。でへ!」的な本を選んだ。さらにインターネットでマラミュートのサイトを探しだし、飼い主との楽しい暮らしぶりをプリントアウトした。それらのアイテムを、だんな様になる人にウリウリと見せつけ、いかに素晴らしい犬であるか、熱く語った。彼は基本的にはニュートラルな人で、私のやることなすことを鷹揚に見守っているタイプ。「マラミュートと暮らしたい!!」という、私のスペシャルなワガママを聞き入れ、実際のマラミュートを見に行くところまで漕ぎつけた。

 見に行った先は、インターネットでマラミュートのサイトをオープンしている方の家だった。そこのお宅には、女の子の「マーラ」、男の子の「リキ」、「ボス」、「レオ」と、合計4頭のマラミュートがいた。はじめて訪れた私たちを、彼らは熱烈大歓迎してくれた。どの子も明るくって優しい。そして、飼い主の言うことをよく理解する、素直で利発な子だった。こんなに人懐っこくって可愛いなんて!私の中に「我が家に迎えてしまえばなんとかなる!」という気持ちが生まれはじめた。その後はお宅に上がりこみ、奥様の美味しい手料理と、ドッグショーや犬橇大会のビデオで盛り上がった。また、マラミュートの歴史や性質などについてもいろいろと教えてもらった。マラミュートはほかの犬種と比べて支配性が強いこと。服従訓練をして、誰がボスか明確にすること。有り余る体力と精神力を、発散させてあげること。その他いろいろ・・・。

 話しを聞いているうちに、「私はマラミュートを飼える人間じゃない」とつくづく思った。ウチには広い庭がある訳じゃない。しかも、共働きで日中は留守。こんな環境で犬なんて飼えない。まして、世界最強の橇犬だもの、手におえない。最後まで飼いきる自信がない。マラミュートはアラスカ生まれ。日本のチマチマした住宅で飼う犬じゃないんだ・・・・。

 がっかりしながら帰路についた。追い討ちをかけるように、未来のだんな様が言った。
 「ウチで飼える犬じゃないね。大きいし、面倒見きれないでしょ?」
打ちのめされたような気分だった。いつか軽井沢か北海道にでも引っ越して、広い庭と有り余る時間が手に入ったらマラミュートと暮らそう。そう思って泣く泣く諦めた。いいの。もともと猫派だもん。犬がダメなら猫と暮らそう。そうしよう。さよなら、アラスカンマラミュート。

 恋心はくすぶりつづけ、未練たらたらの毎日だった。本屋で「愛犬の友」を立ち読みしては、マラミュートのブリーダーさんをチェックしていた。以前遊びに行ったお宅が勧めてくれたブリーダーさんは、広告なども載ってなく、繁殖の予定もないようだった。また、非営利でマラミュートの勉強会を開催している団体が勧めるブリーダーさんは、九州方面なのでとても見に行けそうもなかったし、繁殖の予定もないようだった。そして私は、毎月立ち読みしているうちに毎回広告が載っているブリーダーさんに気がついた。場所は熊谷、そう遠くない場所。犬たちの明るい表情や「子犬、産まれてます」って広告を見るたび、電話して話しだけでも聞きたい!という衝動にかられた。我慢、我慢。いつか、マラミュートと暮らせる環境になったら、このブリーダーさんから子犬を求めよう。

 そのときは、1年後に莱夢を迎えることになろうとは思いもしなかった。